ビル設備省エネ提案の内容が変って来た
私たちの住む社会環境は時代が進むにつれて変化の度合いが激しくそして早くなっているように感じられます。省エネへの取り組みを考えて見ても、2年ほど前までは地球温暖化ガスの排出規制が大前提で国際的にもまじめに取り組んでいる国よりそうでない国の方が多いぐらいに、皆の真剣度がまちまちで規制への感覚が緩やかだったと言えます。しかしほぼ1年半前の東日本大震災に伴って発生した福島原発災害以降は関東地域の電力不足が深刻な社会問題となり、この地域の全住居は勿論多くの産業が部分休業までして節電に真剣に向き合わざるを得ませんでした。災害があったからとは言え2年ほど前の節電意識と今のそれとは社会全体でがらりと変わったと言えます。
ビルの省エネに携わってきた私共も以前は、ビルオーナーやテナントの皆さんの現状の活動に出来るだけ影響を及ぼすことなく設備運転の省エネ効果を上げることに注力してきましたが、最近はそのやり方が大きく変って、ビルオーナーやテナントの活動に変更が加わっても皆さんの了解と協力を得ながらより大きな省エネ効果を上げることの方が皆さんに受け入れられ易い環境になって来たように思います。
即ち、以前の省エネ提案は既設主要機器のオーバースペック気味の運転状態を正すことによる電力量の削減や冷水・温水の設定温度及び空気の温湿度条件を省エネ方向に変えることによるエネルギー削減などほぼ空調理論だけに基づいた提案が主流であった、いわゆる「地道な省エネ提案」だったように思われます。しかし最近の省エネ提案はより積極的な「目標達成型の削減提案」に変わって来ている感じです。この手法はビルオーナーやテナントを巻き込んだ省エネ提案で、電力等のエネルギー削減量に目標値を設定してオール関係者でそれを共有し省エネ提案の実施に取り組むものです。これは以前よりかなり大きな省エネに繋がります。
この種の提案は基本的には「使わない部屋の照明を消す」方式に似ています。残業時に専用スペースを空調し昼間の大部屋停止、会議室・専用食堂の未使用時は空調停止、などわかり易いものの他に年間空調負荷を詳細に検討し中間期の一定期間複数台ポンプの一部を停止する、ピーク熱負荷を実績値を踏まえて見直し4台冷凍機の内1台を停止可能とし得た、などの空調技術の活用による幾つかの提案を含めて、いわゆる停止効果狙いの省エネ提案が大きな比重を占めるように変わって来たと感じてます。
従来運転していた機器を、毎日一定時間停止出来る、中間期一定期間停止出来る、などの停止による節電効果は意外に大きいことを実感しています。これらはビルオーナーやテナントの協力が不可欠なものが多く、これが実現しつつあるのはオーナー・テナントの皆様が私共コンサルと違わないほどの省エネ意識を持つまでに変わってこられたからに相違ありません。それは3.11災害が起点となって東日本の住民・産業人の意識を変え、今後は西日本及び国全体に広がっていくことでしょう。
以 上
2012.07.30 S.K